円安・株高の今、「一括で突っ込むのは怖い」。——その感覚、正しいです。この記事では、iDeCo(イデコ)への移管を中心に、退職金や預金の使い分け、そして一括投資と分散投資のシミュレーション結果まで、54歳からの実務に直結するポイントをコンパクトにまとめます。
この記事の想定読者
- 54〜55歳で早期退職を検討・予定
- 企業型DC(401k)を保有しておりiDeCoへ移管を検討
- 退職金があり、一括投資が心理的に不安
- 65歳以降の年金を見据え、取り崩しに強い設計にしたい
まず結論(要約)
- 退職金はiDeCoに直接は入れられない。
- iDeCoへ移せるのは企業型DC(401k)の資産のみ。
- 401k→iDeCo移管は原則ベスト。
- 運用益が非課税で、受け取り時の控除メリットもある。
- 投資は“時間分散”が有効。
- 円安・株高局面での一括投資はメンタルダメージが大きい。
- 移管資産の一括スイッチングも可能だが、分散投資が安心。
- 65歳からの年金で生活の土台を作り、NISA+iDeCoで不足分を補う。
① iDeCoに移せるお金・移せないお金
- 移せる: 企業型DC・企業型401kの資産(転職・退職時の“移換金”)
- 移せない: 退職金そのもの、一般の預貯金、金融商品全般
実務ポイント:退職時は“退職金”と“企業型DC資産”が別ルート。DC資産は“喪失から6か月以内”を目安に移管手続きを進めるとスムーズ。
② iDeCo移管後の運用は「自分で決められる」
- 口座に着金後は、商品配分(アロケーション)を自分で設定。
- 代表的なやり方
- 一括スイッチング:移管直後にS&P500等へまとめて配分
- 時間分散(推奨):毎月/四半期ごとに配分比率を段階的に引き上げ
- 60歳まで引き出せないため、短期で使う予定の資金は入れない。
③ 一括投資 vs 分散投資:10年シミュレーション
前提:移管資産900万円、運用期間10年、年率**4%**想定。
シナリオ | 10年後の資産額 |
---|---|
一括投資 | 1,332万円 |
分散投資(毎年1/10) | 1,124万円 |
一括投資(初年-30%暴落) | 897万円 |
分散投資(初年-30%暴落) | 1,080万円 |
解釈
- 通常時は一括が有利(複利を早く効かせられる)。
- ただし初期に暴落が来ると一括は大ダメージ。分散は損失耐性が高い。
- 退職金・移管金のような“メンタル的に重要なお金”は、分散投資が合理的。
④ どんな商品を選ぶ?(例)
長期の軸はコストが安いインデックスが基本。
- S&P500インデックス:米国主力株。成長のけん引役。
- 全世界株インデックス:地域分散。米国一極の偏りを緩和。
- 国内債券/短期国債:下落時のクッション(安全資産)。
簡易モデル例(リスク耐性“中”)
- S&P500:40%
- 全世界株:40%
- 国内債券:20%
円安リスク対策:為替ヘッジ付商品は長期ではコスト増のデメリットも。“円安に過度に怯えず、時間分散+現金比率”で吸収する考え方が無難。
⑤ 退職金・預金との使い分け(実務設計)
- 現金(生活防衛):まずは2年分の生活費+突発費(例:850万円)を確保。
- iDeCo(移管900万円):長期運用の“エンジン”。時間分散で配分。
- 新NISA:退職金から毎年枠内で分散投入(成長投資枠+つみたて枠)。
- 高配当株はNISA側で:配当非課税を生活費の一部に回せる。
ポイント:65歳までの橋渡し資金は“現金+NISAの配当・取り崩し”、65歳以降は年金+NISA配当+iDeCo受取で最適化。
⑥ 受け取り戦略(iDeCo・年金・税制)
- iDeCoの受取:
- 一時金:退職所得控除を使える(会社の退職金との通算は要注意)
- 年金受取:公的年金等控除の範囲で課税最適化
- 併用も可。退職金の受給時期とiDeCoの受取時期をずらすと控除を最大化しやすい。
- 公的年金:
- ご夫婦65歳からの目安:月22〜23万円(世帯)。
- 70歳までの繰下げは増額効果が大きいが、健康・資金余力とセットで判断。
⑦ 手続きの流れ(チェックリスト)
- 退職前に企業型DCの残高・運用商品・加入者資格喪失日を確認
- 受け皿となるiDeCo金融機関(口座)を先に開設
- 企業型DCから移換手続き書類を取り寄せ、iDeCo側へ提出
- 口座着金後に商品配分を設定(最初は保守的→徐々にリスク資産へ)
- **受取方法(年金・一時金・併用)**の方針を事前にシミュレーション
⑧ よくある質問(簡易Q&A)
Q. 退職金はiDeCoに入れられないの?
- A. 入れられません。 iDeCoは掛金方式。移せるのは企業型DC資産のみ。
Q. 円安が怖い。為替ヘッジは使うべき?
- A. 長期ではコスト負担が重くなりがち。時間分散+現金比率の調整で対応する方法が現実的。
Q. 一括投資はダメ?
- A. ダメではありません。長期リターンは高くなりやすい。ただし初期暴落時の心理的ダメージが大きいので、退職金・移管金は分散投資が無難。
Q. iDeCoの中で商品を乗り換え(スイッチング)できる?
- A. 可能。 分散→徐々にリスク資産へ、相場下落時に配分引き上げなど柔軟に。
⑨ 本記事の使い方(アクションプラン)
- DC残高と退職スケジュールを洗い出す
- iDeCo口座を先に開設(SBI/楽天など)
- 初期配分は株:債券=60:40程度から開始
- 四半期ごとに株式比率を+5%ずつ引き上げ(時間分散)
- NISAは毎年枠内で自動積立を設定
- 受け取り時の課税(退職所得控除・公的年金等控除)を年金開始前に再点検
まとめ
- iDeCo移管(企業型DC→iDeCo)は“まずやる”が正解。
- 投資は円安・株高にビビって止めるのではなく、時間で分散して前進。
- 65歳以降は年金+NISA配当+iDeCo受取で“揺れにくい家計”を作る。
一括か分散かで迷ったときは、眠れる方を選ぶ。資産運用は“続けられる設計”が最強です。