企業型DC(企業型確定拠出年金・いわゆる401k)からの早期退職。資産はどう守り、どう活かす?――iDeCo(個人型DC)へ賢く移す手順と注意点を、59歳・2000万円ケースでわかりやすく解説します。
この記事の結論(要点だけ先取り)
- 退職後も非課税で運用を続けたいなら、企業型DC→iDeCoへの「資産移換」が基本解。
- 移せる金額に上限はなく、2000万円でも“全額移換”が可能。(新規拠出の上限ではなく「移換」扱いのため)
- 移換は原則早めに着手(退職後なるべく早く)。自動移換になってしまうと運用停止・手数料負担などデメリット大。
- 流動性の確保は別口座で。iDeCoは60歳以降まで引き出し不可(受給開始は加入年数で繰り下がる場合あり)。
- 税制は**一時金(退職所得控除)も年金(公的年金等控除)**も選べる。受け取り方の設計が節税のキモ。
用語のサクッと整理
- 企業型DC(401k):会社が用意する確定拠出年金。退職すると掛金拠出は停止、通常は「運用指図者」になるか、iDeCo等へ移換。
- iDeCo(個人型DC):自分で拠出・運用する確定拠出年金。移換であれば金額上限なし。60歳以降で受給、加入年数により開始年齢が繰り上げ/繰り下げ。
- 自動移換:退職後の手続きが遅れると資産が国民年金基金連合会に移され、運用不可・手数料発生・加入期間に通算されない等の不利益。
退職後の選択肢(比較表)
選択肢 | メリット | デメリット | 向いている人 |
---|---|---|---|
企業型DCに残し「運用指図者」 | 手続き最小、非課税運用継続 | 商品やコストがやや不利な場合、会社側規約次第 | すぐに決められず一旦置きたい |
iDeCoへ資産移換(推奨) | 低コスト商品が選べる/全額非課税で継続 | 60歳まで原則引き出し不可、手続きが必要 | 中長期で増やしたい |
課税口座やNISAで保有 | 流動性が高い、NISAなら非課税枠 | 売却課税の可能性、運用管理は自己責任 | 近い将来に使う資金がある |
ベストプラクティス(59歳・資産2000万円の考え方)
- 生活防衛資金の確認:医療費・生活費など、5〜10年で確実に使うお金は別口座・NISA等で確保。
- それ以外はiDeCoに移換:非課税での長期運用メリットが大きい。低コストインデックス中心に。
- 受取設計を先に決める:
- 一時金:退職所得控除の枠を活用(過去の退職一時金受取と重複年の調整に注意)。
- 年金:公的年金等控除で毎年の課税を抑制。
- **「一部一時金+一部年金」**のハイブリッドも検討。
企業型DC→iDeCo「資産移換」手順(実務フロー)
目安期間:1〜2か月(事業主証明の取得や現旧機関のやり取りに時間がかかることあり)
- 受け入れ先(iDeCo取扱金融機関)を選ぶ
- 低コスト(信託報酬)/運営管理手数料/商品ラインナップ/分割受取の柔軟性を比較。
- iDeCo加入・移換の申込書を取り寄せ(Web申し込み→郵送の組み合わせが一般的)。
- 「事業主の証明(資格喪失日等)」の準備
- 退職した会社の人事・総務に資格喪失日の入った証明書類を依頼(企業型DCの加入喪失を証明)。
- 現行の運営管理機関へ「移換手続き」依頼
- 現在の企業型DCの運営管理機関(例:野村・大和・SBI・三菱UFJ信託等)に移換先(iDeCo)の情報を提出。
- 受け入れ先での口座開設・資産受入
- 受入完了までの間は一時的に現金化されることが多く、相場変動リスクに注意。
- 着金後、配分指定
- 基準配分(スイッチング設定)を必ず確認。放置すると初期配分のままに。
- 加入者区分・掛金可否の確認
- 国民年金の区分(第1号/第3号/第2号)で掛金の可否・上限が変わる。移換は金額上限なしだが、その後の新規掛金は区分と年齢に依存。
TIP:自動移換を避ける
退職後の手続きが遅れると自動移換に。運用停止・残高から手数料が差し引かれ、加入期間に通算されないため、受給開始年齢の判定で不利になります。必ず早めに移換を着手しましょう。
金融機関の選び方チェックリスト
- □ 運営管理手数料:口座管理手数料が無料か(条件付き無料含む)
- □ 投信の信託報酬:インデックスの超低コストが揃っているか
- □ 商品ラインナップ:株式・債券・バランス・REIT・定期預金など分散可能か
- □ サポート:**受取方法(年金/一時金/併用)**の柔軟性、手続きの分かりやすさ
- □ 受給時の手数料:年金受給時の受取都度手数料や移換・スイッチング手数料
受給開始年齢の基礎(重要)
- iDeCoは60歳以降に受給可能。
- ただし加入期間が10年未満だと、受給開始年齢が繰り下がる(例:加入1〜5年 → 65歳から 等)。
- 企業型DC→iDeCoの「移換後の加入期間」も判定材料。自動移換期間は通算されない点に注意。
税制の押さえどころ
- 運用益は非課税(iDeCo口座内)。
- 受取時の課税:
- 一時金:退職所得控除の枠内なら課税ゼロも可能。複数の退職一時金と同一年判定の調整に注意。
- 年金:公的年金等控除の枠内で所得圧縮。医療費控除・社会保険料控除など他控除との組み合わせでさらに最適化。
- 遺族への承継:相続の取り扱い(受取人指定、非課税口座の扱い)も各社の規約を確認。
ケーススタディ:59歳で資産2000万円を移換
- 前提:年利3%で運用、65歳に一時金受取の想定
- 概算:2000万円 → 65歳で 約2459万円(単利でなく複利運用のイメージ)。
- 受取設計:
- 一時金で退職所得控除の範囲に収めるか、
- 10年等の年金形式にして公的年金等控除を活用、
- 半分を一時金・半分を年金で分散課税、が現実的。
注意:相場は上下するため、5〜10年スパンでリスクを許容できる配分を。医療費等は別口座で確保。
ありがちなつまずきと解決策
- 事業主証明がもらえない → 会社の人事・総務にDC加入喪失の証明書を依頼。押印・日付の不備に注意。
- 申込書の記入ミス → マイナンバー、基礎年金番号、旧姓/現姓など照合不一致が遅延の原因。写しを添付。
- 移換中の相場変動が怖い → 受け入れ完了まで一時的に現金化されることがある。タイミング分散も検討。
- 自動移換になっていた → 速やかにiDeCo等へ「引き戻し移換」を実施。運用不可・手数料負担が続く期間を最短に。
NISAとの使い分け
- iDeCo:非課税+受取時の節税が大きい反面、引き出し不可。老後の柱に。
- NISA:いつでも引き出せる非課税口座。医療費・生活費の流動性確保に。
- 結論:
- 近5〜10年で使う可能性のある資金 → NISA/現金
- それ以外の長期資金 → iDeCo移換で非課税運用
退職直後のToDoチェックリスト
- 受け入れ先のiDeCo金融機関を決める
- 退職企業の事業主証明を依頼
- 現運営管理機関へ移換手続きを申請
- iDeCoの加入・移換書類を提出(本人確認・マイナンバー)
- 受け入れ完了後、配分指定(投資割合)を設定
- 受取方法(一時金/年金/併用)の設計を事前にシミュレーション
会社・運営管理機関へ送る依頼文テンプレ
件名:企業型確定拠出年金の資格喪失および資産移換手続きについて
◯◯株式会社 人事ご担当者様/運営管理機関ご担当者様
お世話になっております。◯◯(氏名)と申します。
このたび、◯年◯月◯日付で退職(資格喪失)となりました。
つきましては、個人型確定拠出年金(iDeCo)への資産移換手続きを進めたく、必要書類(資格喪失の証明等)の発行・ご案内をお願いいたします。
移換先:◯◯証券(記号番号:◯◯)/加入者番号:申請中
ご不明点がございましたらご連絡ください。
よろしくお願いいたし